損益だけの日記で分からないこと
損益の数字だけでは、「なぜ負けたのか」「同じ負けをくり返していないか」が見えにくくなります。たとえば、同じ負けでも次の2つは意味が違います。
- ルールどおりに入って、ルールどおりに損切りした負け
- 負けの直後に、決めていない場面で入った負け
1つ目は、手法の中で起きる普通の負けです。2つ目は、手法ではなく「そのときの状態」から来た負けかもしれません。この2つを分けるには、損益と同じ行に、気持ちとルールのことを書いておく必要があります。
1回のトレードを1行で書く
続けるために、1回を1行で書ける形にします。列は、次の例くらいで十分です。「決めていた場面か」は、入る前に決めておいた条件(自分のルール)どおりの場面だったか、という意味です。
表は横にずらして見られます →
| 日時 | 銘柄・売買 | 決めていた場面か | 入る前の気持ち | ルールを守れたか | 損益 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 月 21:10 | EUR/USD 買い | はい | 落ち着いていた | はい | −12 | 損切りどおり |
| 月 21:25 | USD/JPY 売り | いいえ | 悔しい | いいえ (損切りを動かした) | −30 | 取り返したかった |
(数字は書き方の例です。損益は口座の通貨で書きます。)
気持ちの言葉の例
焦り/悔しさ/退屈/不安/期待/疲れ/落ち着いていた/自信があった/よく分からない。ぴったりの言葉がなければ、自分の言葉でかまいません。
「ルールを守れたか」は、はい・いいえで
守れなかった時は、どのルールかを短く書きます(「損切りを動かした」「上限の回数を超えた」など)。損切りを動かしてしまう人は、損切りを動かしてしまう理由と、動かす前の確認も参考にしてください。
損益は、正しく書く
損益は、業者の取引の履歴からそのまま写すのが確実です。手で計算する時は、損益の計算で、エントリーと決済の価格から出せます(スプレッド・手数料・スワップは含まないので、履歴の数字と少し違うことがあります)。
1日の終わりに、3つだけ数える
- 今日の回数(決めていた上限と比べて)
- 「決めていた場面か」が「いいえ」だった回数
- 「ルールを守れたか」が「いいえ」だった回数
回数と勝ち負けは、今日の記録カードで、トレードのたびに1回押すだけで数えられます(気持ちやルールのことは、カードには残らないので日記に書いてください)。回数が多い日が気になる人は、売買しすぎに気づく数え方もどうぞ。
1週間に1回、見返す
書くだけでなく、見返すと形が見えてきます。週に1回、次の3つを見ます。
- 「ルールを守れた」トレードと「守れなかった」トレードの損益を、別々に足す
- 守れなかったトレードの前の気持ちに、同じ言葉が多くないか(「悔しい」「退屈」など)
- 守れなかったトレードが多い時間や曜日はないか
たとえば「悔しい」の後のトレードで、ルールを守れないことが多いと分かれば、「負けた直後は○分入らない」のように、自分で決めごとを作れます(一例で、おすすめではありません)。数が少ないうちは、たまたまのことも多いので、決めつけずに続けて見てください。
研究で分かっていること(短く)
- 目標への進み具合を記録・確認するよう促した実験138件(約2万人)をまとめた研究では、記録や確認をするよう促された人の方が、目標を達成しやすくなっていました。進み具合を書き残す時や、人に報告する時の方が、効果は大きくなっていました。対象は健康や運動などの目標で、トレードの研究ではありません。[1]
- デイトレーダー80人が参加し、気持ちを5週間、毎日調べた研究では、損得への感情の反応が強い人ほど、成績が悪い傾向がありました。どちらが原因かまでは分かりません。[2]
- 実験室の実験(30人)では、怒りや恐れの表情の写真を見ながら、その表情に合う感情の言葉を選ぶと、扁桃体など感情に関わる脳の部分の反応が小さくなっていました。トレード中の自分の気持ちを調べたものではありません。[3]
日記をつければ成績が良くなる、とまでは言えません。それでも、書いて残すと自分の形に気づきやすくなること、顔写真に合う感情の言葉を選ぶと、感情に関わる脳の反応が小さくなった実験があることは、研究からもうかがえます。
損が続いて苦しい時や、やめたいのにやめられないと感じる時は、一人で抱えなくて大丈夫です。多くの国や地域に、お金やのめり込みについて相談できる窓口があります。
参考文献
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025
- Lo, A. W., Repin, D. V., & Steenbarger, B. N. (2005). Fear and Greed in Financial Markets: A Clinical Study of Day-Traders. American Economic Review, 95(2), 352–359. https://doi.org/10.1257/000282805774670095
- Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x