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損切りを動かしてしまう理由と、動かす前の確認

価格が損切りに近づいてきた。「もう少しで戻りそう」と、損切りを少しだけ遠くへずらす。そして、またずらす。身に覚えのある人は多いと思います。この記事では、なぜそうなりやすいのかを短く見てから、動かす前に確かめることと、動かした回数の数え方を紹介します。損切りを動かすこと自体が、いつも悪いとは限りません。目印は、最初に決めたルールにない動かし方をしているかどうかです。

公開 2026年10月12日更新 2026年10月21日書いた人: Tiltnote 運営代表 奥村 健児(FX の経験があります)

まず1つだけ

損切りを遠くへ動かしたくなったら、動かす前に「新しい損切りで負けたら、いくらになるか」を出して、最初の額と並べてください。損益の計算に、エントリー価格と新しい損切りの価格を入れると分かります。

どんな動かし方の話か

この記事で扱うのは、損失が大きくなる方向(遠く)へ、最初に決めていなかった理由でずらすことです。たとえば次のような形です。

一方で、最初から決めていたルールどおりに損切りを近づける(利益が出た後に建値まで動かす など)のは、ここでいう「動かしてしまう」とは別の話です。大事なのは、その動かし方が、入る前に決めたルールに書いてあるかどうかです。

遠くへずらすと、損失の額が変わる

たとえば EUR/USD を 0.1 ロット(ロットは取引の量)、ドル口座で、損切りの幅が 20pips(pips は値動きの幅の単位)なら、届いた時の損失は約20ドルです。これを 40pips にずらすと、約40ドルになります。損切りの幅を2倍にすると、届いた時の損失も約2倍です。口座の通貨が円やユーロなどの場合、額は変わりますが、幅を2倍にすると損失も約2倍になるのは同じです。

入った価格から20pipsの所に置いた損切りを、価格が近づいた時に40pipsの所へずらし、そのあと価格が40pipsの損切りに届いた図。損失は約20ドルから約40ドルになる。
作った値動きの例(EUR/USD 0.1ロット・ドル口座)。損切りを20pipsから40pipsへずらすと、届いた時の損失は約20ドルから約40ドルになります。

ロット数をそのままにして損切りだけを遠くへずらすと、入る前に「1回でここまで」と決めていた額を超えます。1日の損失の上限を決めている人は、今日の記録カードに上限を入れ、負けた時に額も入れて押すと、上限まであといくらかが出ます。上限の金額は、損失の上限の計算で出せます。

また、損切りの注文は、急な値動きや週明けなどに、その価格より悪い価格で決済されることがあります。損切りの注文を外していると、その分の歯止めもなくなります。

動かす前に確かめること

その場で迷わないように、次の4つを順に確かめます。

1. この動かし方は、ルールに書いてあるか

入る前に決めたルールにある動かし方なら、ルールどおりです。書いていないなら、「その場で決めた動かし方」です。

2. 遠くへか、近くへか

遠くへずらすと、届いた時の損失が増えます。近くへずらすのとは、意味が逆です。

3. 新しい損切りで負けたら、いくらか

損益の計算で、新しい損切りの価格で決済した時の額を出し、最初の額と並べます。損切りを pips の幅で決めている人は、損切り・利確の価格の計算で、最初の損切りの価格を確かめ直せます。

4. 動かしたくなった理由を、1行書く

「もう少しで戻りそう」「ここで切ると悔しい」など、思ったことをそのまま書きます。書いてから決めると、その場の勢いだけで決めにくくなります。

決めておく形の例(おすすめではありません)
  • もし価格が損切りに近づいて、遠くへずらしたくなったら → ずらさず、その気持ちを記録に書く
  • もしルールにない動かし方をしたら → その日は新しくは入らない
  • もし損切りを近づけるなら → 入る前に決めた条件の時だけ

ご自身の手法に合う形を、ご自身で決めてください。

動かした回数を数える

感覚ではなく数で見ると、気づきやすくなります。1回のトレードごとに、次を残します。

1週間ほど続けると、「負けが続いた日に動かしやすい」「疲れている時間に多い」など、自分の形が見えてきます。トレードの回数と勝ち負けは、今日の記録カードで、トレードのたびに1回押すだけで数えられます(損切りを動かした回数は、このカードでは数えられないので、自分のメモに書いてください)。

なぜ動かしたくなるのか(研究から短く)

損切りに近づいた時に手が動くのは、意志が弱いからとは限りません。多くの人に共通する傾向が、研究で知られています。

これらの研究が調べたのは「いつ売ったか」で、損切りの注文を動かすことそのものではありません。国・商品・時代も違います。それでも、損の出ている場面では、決めたことを先に延ばしたくなりやすいことは、多くの人に当てはまりそうです。だからこそ、その場で考えるより、入る前に決めておき、動かす前に確かめる手順が役に立ちます。

損が続いて苦しい時や、やめたいのにやめられないと感じる時は、一人で抱えなくて大丈夫です。多くの国や地域に、お金やのめり込みについて相談できる窓口があります。

参考文献

  1. Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263–291. https://doi.org/10.2307/1914185
  2. Shefrin, H., & Statman, M. (1985). The Disposition to Sell Winners Too Early and Ride Losers Too Long: Theory and Evidence. The Journal of Finance, 40(3), 777–790. https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1985.tb05002.x
  3. Odean, T. (1998). Are Investors Reluctant to Realize Their Losses? The Journal of Finance, 53(5), 1775–1798. https://doi.org/10.1111/0022-1082.00072
  4. Han, G., & Preda, A. (2025). Does home bias amplify the disposition effect? Evidence from retail forex trading. Finance Research Letters, 86, 108263. https://doi.org/10.1016/j.frl.2025.108263
  5. Weber, M., & Camerer, C. F. (1998). The disposition effect in securities trading: an experimental analysis. Journal of Economic Behavior & Organization, 33(2), 167–184. https://doi.org/10.1016/S0167-2681(97)00089-9

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更新日 2026年10月21日 · 運営: Tiltnote 運営代表 奥村 健児 · このサイトについて