守れなくなりやすい場面
ルールを破る時は、ある程度決まった場面がよくあります。たとえば次のようなものです。
- 負けた直後に、取り返したくて、決めていない場面で入る(取り返しトレード)
- 価格が損切りに近づいて、損切りを遠くへずらす(損切りを動かしてしまう理由)
- 1日の回数や損失の上限に届いたのに、「もう1回だけ」と続ける
- 連敗の後や、逆に大きく勝った後に、ロットを上げる
どれも、入る前に聞かれれば「やらない」と答えそうなことです。それでも、その場では手が動いてしまうことがあります。
分かっていても守れない理由(研究から短く)
守れないのは、意志が弱いからとは限りません。決めたことを守る難しさについて、次のようなことが研究で知られています。
- 落ち着いている時の人は、気持ちが高ぶった時に自分がどう動くかを、低く見積もりやすい、という考え方があります(「ホット・コールドのギャップ」)。[1] 入る前の自分と、負けた直後の自分は、同じ人でも判断が違いやすい、ということです。
- 「もし〇〇になったら、△△する」と、場面と行動を前もって結びつけて決めておくと(実行意図)、目標の達成によい効果があったことが、多くの研究をまとめた分析で報告されています(まとめた効果の大きさは、中〜大くらい)。[2]
- 目標に向けて自分の進み具合を確かめる(記録する・見返す)ように促すと、目標の達成が後押しされたことも、多くの研究をまとめた分析で報告されています。記録を残した時や、ほかの人に見せた時に、その効果は大きめでした。[3]
これらの研究は、健康や勉強など、トレード以外の目標を調べたものが中心です。トレードでも同じ大きさで効くとは言えません。それでも、その場の自分に任せるより、前もって決めて、守れたかを記録して見返すという方向は、試す価値がありそうです。
記録するのは3つだけ
たくさん書こうとすると、続かないことが多いです。まずは1回のトレードごとに、次の3つだけを残します。
1. ルールを守れたか(はい/いいえ)
理由は書かなくて大丈夫です。迷ったら「いいえ」にします。
2. 入った時の気持ち
「計画どおり」「焦って入った」「取り返したくて入った」「欲張った」など、短い言葉を決めておき、その中から1つ選びます。言葉を毎回変えないことが、後で数える時のこつです。
3. その日の損失と、上限まであといくらか
1日の損失の上限を決めている人は、今日の記録カードに上限を入れ、トレードのたびに押して、勝ち負けの額も入れると、上限まであといくらかが出ます。上限の金額は、損失の上限の計算で出せます。
1週間後に数える
1週間ほどたったら、次を並べてみます。
- 守れたトレードの数と、守れなかったトレードの数
- それぞれの損益の合計
- 守れなかった時に、どの気持ちが多かったか
- 守れなかったのは、何時ごろ・何回目のトレードが多かったか
損益の一覧があれば、取引履歴の統計に「守れた時」と「守れなかった時」を分けて貼ると、それぞれの平均の損益や勝率を出せます。
ただし、数が少ないうちは、差はたまたま出ることもあります。守れなかった時の損益が悪くても、それだけで「ルールを破ったから負けた」とは言い切れません。大事なのは数字の大きさより、「負けが2回続いた後に破りやすい」「夜遅くに多い」のような、自分の形に気づくことです。
- もし負けが2回続いたら → その日は新しく入らず、気持ちを記録に書く
- もし「もう1回だけ」と思ったら → 入る前に、今日の損失と上限を、声に出すか紙に書いて確かめる
- もし損切りを遠くへずらしたくなったら → 損切りは入る前に注文で入れておき、入れた後は遠くへ動かさない
- もしルールを破ったら → 次の1回は、決めたロットより小さくする
どの形が合うかは人によって違います。ご自身で決めてください。
苦しい時は
損が続いて苦しい時や、やめたいのにやめられないと感じる時は、一人で抱えなくて大丈夫です。多くの国や地域に、お金やのめり込みについて相談できる窓口があります。お住まいの地域の名前と「ギャンブル 相談」「借金 相談」などの言葉で探せます。気持ちがつらい時は、身近な医療機関に話すこともできます。
参考文献
- Loewenstein, G. (2005). Hot-cold empathy gaps and medical decision making. Health Psychology, 24(4, Suppl), S49–S56. https://doi.org/10.1037/0278-6133.24.4.S49
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025