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「個人トレーダーの○割が損をしている」の数字の読み方。当局と研究の数字を並べる

「個人トレーダーの9割は負ける」と聞いたことはありませんか。実際に当局や研究が公表した数字を並べると、利益が出た人が約6割(今 FX をしている人の自己申告のアンケート、日本)というものから、損をした人が97%(ブラジルの研究)というものまで、大きく違います。違いの多くは、数字の作り方の違いです。誰を数えたのか(口座か、人か)、何の商品か、どの期間か、何を損と数えたかが、数字ごとに違います。この記事では、出どころを開いて確かめた数字を表に並べ、読む時に見る点をまとめます。「だからやめた方がいい」とも「自分は大丈夫」とも言いません。最後に、自分の数字を自分の記録で数える方法を載せます。

公開 2026年10月19日書いた人: Tiltnote 運営代表 奥村 健児(FX の経験があります)

まず1つだけ

先に、10の数字を並べる

当局のページや論文を開いて、数字・対象・期間・定義を確かめられた物だけを載せています。確かめられなかった物は載せていません(最後の「使わなかった数字」に書きました)。表の並びに意味はなく、どの国・地域の数字が良い・悪いという並びではありません。数字は、書かれた年のもので、今の割合ではありません。

表1 業者のデータを数えた数字(当局の資料)

表は横にずらして見られます →

出どころ(国・地域)商品数えた対象期間「損」の決め方数字
FCA の協議文書 CP18/38(英国、2018年)[3]CFD(差金決済取引)業者の「動いている」リテール(一般の個人)口座。7社(英国のリテール CFD 市場の約65%)が出したリスク警告の加重平均書かれていない各社の警告の数字をそのまま使う。定義はこの文書には書かれていない約78%の口座が損
ESMA の発表(EU、2018年3月27日)[1]CFD(通貨ペアも含む)リテールの口座。各国の当局の分析を集めた範囲書かれていない書かれていない74〜89%の口座が「たいてい」損(国ごとの幅)。顧客あたりの平均の損は1,600〜29,000ユーロ
EU 加盟国4か国(アイルランド・キプロス・スペイン・ポーランド)。ASIC の文書が表にしたもの[5]CFD表の見出しは「損の割合」。口座か人かは書かれていないアイルランド 2013〜14年と2015〜16年、キプロス 2017年1月1日〜8月31日、スペイン 21か月(2015年前半〜2016年後半)、ポーランド 2016年と2017年書かれていないアイルランド 75%・74%、キプロス 76%、スペイン 82%、ポーランド 79%・80%
ASIC の報告書 REP 626 と協議文書 CP 322(豪州、2019年)[4][5]CFD(うち「マージン FX」と、そのほかの CFD)顧客(人か口座かの数え方は書かれていない)。57社の業者が申告したデータ業者が選んだ、2016年1月1日〜2017年6月30日の中の任意の12か月「お金を失った」。細かい定義はこの2つの文書には書かれていないマージン FX 63%、そのほかの CFD 72%(バイナリーオプションは約80%)
金融先物取引業協会(FFAJ)会報 NO.114 に載った岩壷健太郎氏の論文(日本、2017年)[10]店頭 FX(協会の会員業者)口座。毎月1,000口座を無作為に選んだ標本2015年の1年間(月ごとに計算)月ごとの実現損益の収益率(スワップ込み)。最も高い5%と低い5%は除いた。月初にポジションがない、月に1回以上取引した口座だけ平均は約-2.9%でマイナス。1年分の月ごとの値をまとめると半分以上がプラス(中央値は約0.008%)
FFAJ の四半期のデータ。金融庁の検討会の資料に載った岩壷氏のスライド(日本、2018年)[11]店頭 FX口座。増えた口座と減った口座の割合四半期ごと。年度(日本は4月始まり)の四半期。2015年度第1四半期〜2017年度第3四半期の11回入出金を調整した後の、実現損益・評価損益の増減・スワップの合計で、口座の資金が実質的に増えたか減ったか。変わらなかった口座は除く減った口座は47.48%〜75.74%、増えた口座は24.26%〜52.52%(四半期によって大きく違う)
CFTC の消費者向けの注意(米国)[6]登録された業者の店頭外国為替取引業者が開示した「非裁量」の口座2021年第2四半期〜2022年第1四半期四半期ごとに、業者が決まりに従って計算(下の「何を損と数えたか」の表を参照)。ここでの「過去1年」の集計のしかたは書かれていない顧客の約3分の1が利益、約3分の2が損

表2 人を数えた数字(研究とアンケート)

表は横にずらして見られます →

出どころ(国・地域)商品数えた対象期間「損」の決め方数字
Barber ほか「The Cross-Section of Speculator Skill」(台湾、2011年のワーキングペーパー)[14]台湾の取引所の株デイトレードをした個人(平均の年で約36万人)。13%は、年間のデイトレ売買額が60万台湾ドル以上の人に限った値1992〜2006年。年ごとに計算手数料と取引税を引いた後の、その年のデイトレの損益ある年に、費用を引いた後の利益がプラスの人は約13%、市場の動きを除いた超過収益がプラスの人は約15%(決め方が違う)。前年の成績上位約1,000人(1%未満)のグループだけが、翌年も費用を引いた後で安定して市場を上回った
FFAJ の実態調査(日本、2018年4月)。岩壷氏の解説[12]FX今 FX をしている20〜70代の1,000人(自己申告のアンケート)。性別・年代の構成を先に決めて選んだ2017年の1年間本人が答えた、年間の損益利益が出た人は60.3%
Chague・De-Losso・Giovannetti「Day Trading for a Living?」(ブラジル、2020年のワーキングペーパー)[13]株式の先物2013〜2015年にデイトレを始め、少なくとも300日続けた個人300日以上お金を失った(アブストラクトの書き方。細かい定義は本文を確認していない)97%が損。0.4%だけが、銀行の窓口係より多く稼いだ(1日54米ドル超)

表を見ると、「損」の割合が数字ごとに違うのは当然です。口座を数えたのか、300日続けた人だけを数えたのか、アンケートに答えた人を数えたのかで、数える集団そのものが違うからです。次に、読む時の注意を4つ挙げます。

読み方の注意

1. 誰を数えたか。口座か人か、続けた人だけか

2. 何を「損」と数えたか

当局が業者に開示を求める時の数え方でも、決まりが違います。

表は横にずらして見られます →

決まりの出どころ数える単位と期間損の決め方
EU(ESMA の2018年の決定の付属書)[2]業者ごとの、リテール顧客の CFD 取引口座。3か月ごとに計算し、直前の12か月を見る期間中の、実現と含みの純損益の合計がマイナスの口座。手数料などの費用を含める。期間中に建玉(持っている CFD)がなかった口座、CFD 以外の損益、入出金は除く
米国(CFTC の規則 5.5(e) と 5.18(i)。NFA の解釈通知 9053)[7][8][9]業者ごとの、「非裁量」の個人の外国為替の口座。四半期ごと実現と含みの損益に、手数料などを引き、利息などを足す。入出金は除く。結果がゼロかマイナスなら「利益ではない」口座
豪州(ASIC の2019年の協議文書 CP 322 の案)[5]業者のリテール顧客の CFD 取引口座。12か月案では、12か月に損失が出た口座の割合を開示する。現在の命令の文言は、この記事では確かめていません

違いが数字に影響します。期間が3か月か12か月かで、口座の割合は変わります。表1の日本の四半期のデータでも、減った口座の割合は四半期によって47%台から75%台まで動いていました。含み損益を入れるか、手数料やスワップを入れるか、ゼロをどちらに入れるかでも変わります。2018年の EU の決定は、業者ごとの数字を出すことを求めています。一方、ESMA の標準の警告文の「74〜89%」は、業者に開示できる自社の数字がない場合に使う文で、各国の分析にもとづく幅です。[1][2]

3. 平均と分布は別の話

4. 期間と、商品と、国で変わる

この数字から、言えないこと

自分の数字は、自分の記録で数える

世間の数字は、自分の数字の代わりになりません。自分のことは、自分の記録で数えられます。当局の決め方を借りると、他の数字と同じ物差しで数えられます。

  1. 期間を決める: 1か月、または3か月、12か月。
  2. 入出金を除く: 期間の損益 = 期間の終わりの残高 − 期間の始めの残高 − 入金 + 出金。
  3. 費用を含める: 残高で見れば、スプレッド・手数料・スワップは入っています。含み損益を入れるかどうかは、先に決めておきます。
  4. ゼロの扱いを決める: ゼロを「損でない」とするか、「利益でない」とするか。

表は横にずらして見られます →

期間始めの残高入金終わりの残高期間の損益
3か月100,00050,000130,000-20,000

(作った数字の例です。通貨は口座の通貨で同じです。)残高は100,000から130,000へ増えて見えますが、50,000を入金しているので、期間の損益は 130,000 − 100,000 − 50,000 = -20,000 です。入金を除かないと、損を利益と読み違えます。

数えた月数が少ないうちは、偶然の偏りかもしれません。勝率の見方は勝率は何回分の記録で信じられるか、取引の多さと成績の研究は自信過剰と取引の多さ、1か月の見返し方は1か月の記録の見返し方にあります。記録のつけ方はトレード日記に何を書くかで、他の投資との違いはFXとほかの投資の違いで扱っています。損益の一覧から平均損益や最大の下げ幅を出すには取引履歴の統計、記録の表のひな形はトレード日記のテンプレートが使えます。

Tiltnote では、トレードごとの損益、ルールを守れたか、そのときの気持ちを残せます。記録は自分の数字を数える材料です。

使わなかった数字

このページについて

この記事は、投資の助言でも、売買の勧めでもありません。紹介した数字は、書かれた年・国・商品の物で、今の割合や、ご自身の結果を示すものではありません。お金やトレードのことでつらい時や、やめたくてもやめられないと感じる時は、ひとりで抱えず、身近な人や、お住まいの地域の相談窓口に相談してください。

参考文献

  1. European Securities and Markets Authority. (2018年3月27日). ESMA agrees to prohibit binary options and restrict CFDs to protect retail investors. https://www.esma.europa.eu/node/84933
  2. European Securities and Markets Authority. (2018). Notice of ESMA's Product Intervention Decisions in relation to contracts for differences and binary options (ESMA35-43-1135、2018年5月22日の決定。付属書 II「Risk warnings」). https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/library/esma35-43-1135_notice_of_pi_decisions_on_cfds_and_binary_options.pdf
  3. Financial Conduct Authority. (2018). CP18/38 Restricting contract for difference products sold to retail clients and a discussion of other retail derivative products(段落 2.9 と脚注 6〜8). https://www.fca.org.uk/publication/consultation/cp18-38.pdf
  4. Australian Securities and Investments Commission. (2019年8月). Report 626 Consumer harm from OTC binary options and CFDs. https://download.asic.gov.au/media/5241548/rep626-published-22-august-2019.pdf
  5. Australian Securities and Investments Commission. (2019年8月). Consultation Paper 322 Product intervention: OTC binary options and CFDs(段落 43、89〜93 と表 1). https://download.asic.gov.au/media/5241542/cp322-published-22-august-2019.pdf
  6. Commodity Futures Trading Commission. Customer Advisory: Eight Things You Should Know Before Trading Forex(脚注 1). https://www.cftc.gov/LearnAndProtect/AdvisoriesAndArticles/CustomerAdvisory_MustKnowForex.html
  7. National Futures Association. Interpretive Notice 9053(四半期の報告). https://www.nfa.futures.org/rulebooksql/rules.aspx?RuleID=9053&Section=9
  8. 17 CFR § 5.5 (Risk disclosure statement)(Legal Information Institute 版). https://www.law.cornell.edu/cfr/text/17/5.5
  9. 17 CFR § 5.18(i) (Required disclosures. Profitable accounts の計算)(Legal Information Institute 版). https://www.law.cornell.edu/cfr/text/17/5.18
  10. 岩壷健太郎. (2017). FX証拠金取引の投資戦略とパフォーマンス ―保有期間・リスクと収益率の関係―(寄稿論文). 金融先物取引業協会 会報 NO.114(2017年10月). https://www.ffaj.or.jp/wp-content/uploads/2019/06/ffaj-kaihou114-i.pdf
  11. 岩壷健太郎. (2018年3月29日). 店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会 資料4(金融庁). https://www.fsa.go.jp/news/29/singi/20180329-1/04.pdf
  12. 岩壷健太郎. (2018年9月27日). FX取引に関する顧客アンケート結果を踏まえて(金融先物取引業協会 2018年4月の実態調査の紹介). https://www.ffaj.or.jp/wp-content/uploads/2018/09/20180927_hyouron.pdf
  13. Chague, F., De-Losso, R., & Giovannetti, B. (2020年2月). Day trading for a living? FGV EESP Textos para discussão 525(ワーキングペーパー。アブストラクトを確認). https://econpapers.repec.org/RePEc:fgv:eesptd:525
  14. Barber, B. M., Lee, Y.-T., Liu, Y.-J., & Odean, T. (2011年5月). The Cross-Section of Speculator Skill: Evidence from Day Trading(ワーキングペーパー。雑誌版は Journal of Financial Markets, 2014、本文は確認していません). https://faculty.haas.berkeley.edu/odean/papers/day%20traders/Day%20Trading%20Skill%20110523.pdf

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更新日 2026年10月20日 · 運営: Tiltnote 運営代表 奥村 健児 · このサイトについて