10回中8勝でも、本当の勝率は幅で考える
記録の勝率(勝った回数 ÷ 取引の回数)は、そのとき起きた結果です。本当の勝率(その手法を同じ条件でずっと続けた時の勝率)とは、回数が少ないほど大きくずれます。コインを10回投げて表が7回出ても、そのコインの表の確率が70%だとは言えないのと同じです。
統計では、このずれの大きさを信頼区間という幅で表します。ひとことで言うと、記録から見て「本当の勝率がありそうな範囲」です。「95%」は、この計算のやり方で幅を出すと、100回のうち95回ほどは本当の勝率がその幅の中に入る、という意味です。ここでは、よく引用される総説で回数が少ない時に勧められているWilson法で、95%信頼区間を出します。[1][2][3]
- 10回で8勝: 約49〜94%
- 20回で16勝: 約58〜92%
- 100回で80勝: 約71〜87%
- 200回で160勝: 約74〜85%
10回で8勝の幅の下の端は約49%です。本当は勝率50%くらいの手法でも、10回中8勝以上になることは約5.5%の確率で起きます(約18回に1回の割合)。たまたま良い10回を引いた可能性は、まだ消せません。
計算の方法: Wilson法の式で出しています(式は、勝率のぶれ(信頼区間)の計算のページに載せています。自分の回数と勝ち数を入れて、区間を出すこともできます)。別の計算方法(正確法と呼ばれる Clopper–Pearson 法[4])では、10回で8勝は約44〜97%と、さらに少し広くなります。どちらの方法でも、「10回では幅がとても広い」ことは変わりません。
本当の勝率が同じでも、20回と200回で記録はこれだけ違う
逆の向きからも見てみます。本当の勝率が55%で、ずっと変わらない手法があったとします(例としての仮の値です)。その手法で取引した時、記録の勝率は95%以上の確率で次の範囲に入ります。
- 20回: 35〜75%(20回中7〜15勝)
- 50回: 42〜68%
- 100回: 45〜65%
- 200回: 48〜62%(200回中96〜124勝)
- 500回: 約51〜59%
同じ手法を同じように続けていても、20回の記録だけを見ると「勝率35%のだめな手法」にも「勝率75%のすごい手法」にも見えることがあります。200回でも、幅は約14ポイントあります。心理学者のトヴェルスキーとカーネマン(1971年)は、人は少ない回数の結果にも全体と同じ割合が表れるはずだと考えやすい、と報告しています。[5]
数回の負けと、連敗の確率
数回負けて手法をやめたくなる時も、同じ見方ができます。本当の勝率が55%の手法でも、10回のうち勝ちが4回以下(負けが6回以上)になることは約26%、3回以下になることも約10%の確率で起きます(計算の例)。
負けが続いた時に、それがどれくらい起きやすいかは、連敗の確率の記事と連敗の確率の計算で確かめられます。ただし、これは「負けが続いても手法は正しい」という意味ではありません。少ない回数では、良いとも悪いとも言い切れない、ということです。その間は、連敗の中身がルールどおりの負けだったか、ルールを守れなかった負けが混ざっていたかを見返す方が、手がかりになります。
記録を何回分ためてから振り返るか
「何回あれば十分」という1つの答えはありません。どれくらいの差を見分けたいかで変わるからです。例えば記録の勝率が50%前後なら、50回で上下に約13ポイント、100回で約10ポイント、200回で約7ポイントぶれます。
| 回数 | 記録50%の時の95%信頼区間 | 上下にぶれる幅 |
|---|---|---|
| 20回 | 約30〜70% | 約20ポイント |
| 50回 | 約37〜63% | 約13ポイント |
| 100回 | 約40〜60% | 約10ポイント |
| 200回 | 約43〜57% | 約7ポイント |
| 400回 | 約45〜55% | 約5ポイント |
| 1000回 | 約47〜53% | 約3ポイント |
(Wilson法、計算の例。)回数を4倍にすると、幅はおよそ半分になります。見たい差が大きい時(例: 損益分岐の勝率より20ポイント以上高いか)は数十回でも見当がつくことがありますが、見たい差が小さい時(例: 5ポイントの差)は、数百回でも区別しにくくなります。何回ためるかは、この幅を見て自分で決めてください。途中の数回の結果で決まりを変えず、「何回たまったら見返す」を先に決めておくと、ぶれに振り回されにくくなります。
気をつけたい点もあります。
- 条件で分けると、1つずつの回数は減ります。「朝だけ」「この通貨ペアだけ」と分けるほど、それぞれの幅は広くなります
- 相場は変わります。この計算は勝率がずっと同じと仮定していますが、実際の相場では勝率は一定ではありません。何年も前の記録までまとめると、今の手法とは違う物を数えていることがあります
- ルールを途中で変えたなら、変えた後の回数で数え直す方が、今の手法の姿に近くなります
勝率だけでなく、損益の比も合わせて見る
要点: どれくらいの勝率があればトントンかは、平均の利益と平均の損失の比で決まります。信頼区間がその勝率より上にあるかを見ます。
勝率が高くても、1回の負けが1回の勝ちより大きければ、損益はマイナスになり得ます。例えば、平均の利益が平均の損失の1.5倍(利益:損失 = 1.5 : 1)なら、トントンの勝率は 1 ÷(1 + 1.5)= 40% です(式は トントンの勝率 = 1 ÷(1 + 利益÷損失)。手数料・スプレッドは含まない)。
- 例(計算の例): 100回で55勝(記録55%)の区間は約45〜64%。トントンが40%なら、区間はすべてその上にあります。これまでの記録の読み方で、この先も勝てるという意味ではありません(相場は変わります)
トントンの勝率が区間の中に入っている時は、その回数ではまだ区別できません。ご自身の数字でのトントンの勝率は、損益分岐の勝率で計算できます。平均の利益と損失の比も、回数が少ないうちはぶれます。手数料・スプレッドが入ると、実際のトントンの勝率は少し高くなります。
プロップファームの試験を受けている時
プロップファームの試験は、数十回ほどの取引で結果が決まることも多くあります。上の表のとおり、数十回では勝率の幅はまだ広いので、勝率だけを見て読むのは難しい回数です。勝率といっしょに、R(1回の許容損失を1Rとした単位)で見た1回あたりの平均の損益や、1日の損失の上限まであとどれくらいかも見る、という読み方があります。下限まであといくらかは、プロップの残りの損失の計算で計算できます。上限の数え方は会社によって違うので、各社の公式の規則と画面で確かめてください。
この記事の計算は、手法が使えるかどうか・続けるべきかどうかを判断する物ではありません。記録の数字を、どれくらいの幅で読むかの目安です。
参考文献
- Wilson, E. B. (1927). Probable inference, the law of succession, and statistical inference. Journal of the American Statistical Association, 22(158), 209–212. https://doi.org/10.1080/01621459.1927.10502953
- Brown, L. D., Cai, T. T., & DasGupta, A. (2001). Interval estimation for a binomial proportion. Statistical Science, 16(2), 101–133. https://doi.org/10.1214/ss/1009213286
- NIST/SEMATECH. e-Handbook of Statistical Methods, 7.2.4.1 Confidence intervals. https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/prc/section2/prc241.htm
- Clopper, C. J., & Pearson, E. S. (1934). The use of confidence or fiducial limits illustrated in the case of the binomial. Biometrika, 26(4), 404–413. https://doi.org/10.2307/2331986
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1971). Belief in the law of small numbers. Psychological Bulletin, 76(2), 105–110. https://doi.org/10.1037/h0031322