アンカリングとは
1974年の論文は、人は多くの場面で、最初の値から出発して調整し、答えを出す、と書いています。[1] その調整はたいてい足りず、出発点が違うと答えも違い、答えは最初の値の方に偏る。これをアンカリングと呼びました。[1] アンカーは船の錨(いかり)のことです。
回転盤の実験
この論文では、「国連に入っている国のうち、アフリカの国は何%か」などを見積もってもらいました。[1] 先に目の前で回転盤を回して0〜100の数字を出し、「答えはその数字より上か下か」を答えてもらってから、見積もってもらいました。[1]
同じ論文には、高校生に「8×7×6×5×4×3×2×1」と「1×2×3×4×5×6×7×8」を5秒で見積もってもらった例もあります。[1] 中央値は大きい数から始まる式で2,250、小さい数から始まる式で512でした。正しい答えは40,320です。[1] 最初の何回かの計算が、出発点になったと考えられています。
経済指標の予想でも
米国の毎月の経済指標について、専門家の予想の平均(市場予想)を調べた研究があります。[2] 予想は、前の月までの発表の値の方に、決まった向きで偏っていました。[2]
研究は、これはアンカリングと合う一方で、予想する専門家の側の事情から起きている可能性もある、と書いています。[2] また、債券の利回りは、この偏りで説明できる部分には反応していなかったとも書いており、市場の参加者はこの偏りを見越していた、と見ています。[2]
トレードで出やすい場面
たとえば、次のような形で出ることがあります(ここでの例です)。
- 建値: 「買った値段に戻るまで待とう」と、決めていた損切りを先に延ばす
- 前の高値・安値: 「さっきの高値から見れば安い」とだけ考えて入る
- 前の結果: 前回うまくいった利確の幅を、今回の相場の動きと関係なく使う
建値は、自分が入った値段というだけで、相場にとって特別な値段とは限りません。損切りを動かしたくなる時のことは損切りを動かす前にに、キリのいい値段に注文が集まりやすいという研究はサポート・レジスタンスにまとめています。
自分の記録で確かめる(決めるのはご自身)
- 損切りを延ばしたトレード: 「建値に戻るのを待った」トレードに印を付けて、結果をほかと比べる
- 入った理由: 「前の高値より安いから」など、ある値段だけを理由に入ったトレードの結果
- 入る前に決めた値段: 損切りと利確の値段を入る前に書いておき、後でその通りだったかを見る
損切りと利確の値段は損切り・利確の価格のツールで、値幅ごとの損益は損益計算で、今の記録の数字は取引履歴の統計で確かめられます。どう売買するかは、この記事では決めません。
参考文献
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131. https://doi.org/10.1126/science.185.4157.1124
- Campbell, S. D., & Sharpe, S. A. (2009). Anchoring Bias in Consensus Forecasts and Its Effect on Market Prices. Journal of Financial and Quantitative Analysis, 44(2), 369–390. https://doi.org/10.1017/S0022109009090127