損失回避とは
プロスペクト理論を示した論文は、損失回避を「損は得より大きく感じられる」と説明し、お金を失う時のつらさは、同じ額を得る時のうれしさより大きいようだ、と書いています。[1] 同じ論文は、「勝てば x、負ければ x を失う、五分五分の賭け」を、多くの人がはっきり受けたくないと感じる、とも書いています。[1]
どれくらい重く感じるのか
同じ著者たちの後の研究では、意思決定の特別な訓練を受けていない、米国の大学院生25人で実験しました。その中央値で、損は同じ額の得の約2.25倍の重さで感じられており、論文は「はっきりした損失回避」と書いています。[2]
英国の金融行為監督機構(FCA)の論文も、心理的には、損は同じ大きさの得のおおよそ2倍に感じられる、と書いています。[3] ただし、2.25 は25人の実験の中央値で、人や場面で違います。だれでも必ず2.25倍、という意味ではありません。
53か国で調べた研究では、損失回避の強さは文化によって違う、という結果も出ています。[5] また、今ある証拠からは、損が得より強く響くとは全体として言えない、とする論文もあります。[6]
トレードでは「利確が早くなる」形と結びつけて語られる
米国の証券会社の個人口座1万件(1987〜93年、株)を調べた研究では、買った値段より上がっている株(含み益の株)は、下がっている株(含み損の株)に比べて、売られる割合が約1.5倍でした。[4] この研究は、こうした売り方が、その後の成績から見ても理にかなっていなかった、と書いています。[4] この傾向はディスポジション効果と呼ばれ、損失回避を含むプロスペクト理論は、その説明の一つとされています(原因と確かめられたわけではありません)。
FX でも、たとえば次のような形で出ることがありそうです(ここでの例です)。
- 含み益が少し出ると、決めていた利確の所まで待てずに決済してしまう
- 含み損は、戻るのを待って持ち続けてしまう(損切りを動かす前ににまとめています)
勝ちが小さく、負けが大きくなると、勝率が高くても合計がマイナスになることがあります。勝率と損益の比の関係は、リスクリワードと損益分岐の勝率にまとめています。これらは株や実験の研究で、FX にそのまま当てはまるとは限りません。
自分の記録で確かめる(決めるのはご自身)
損失回避は、その場では気づきにくいので、記録で比べると見えやすくなります。
- 平均の勝ちと平均の負け: どちらが大きいか
- 決めていた利確の所まで待てたか: 待てた時と、早く決済した時の数
- 決済した時の気持ち: 「怖くて早く利確した」などをメモに残す
損益の一覧は取引履歴の統計で、平均の勝ちと負けにまとめられます。どう売買するかは、この記事では決めません。
参考文献
- Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263–291. https://doi.org/10.2307/1914185
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1992). Advances in Prospect Theory: Cumulative Representation of Uncertainty. Journal of Risk and Uncertainty, 5(4), 297–323. https://doi.org/10.1007/BF00122574
- Erta, K., Hunt, S., Iscenko, Z., & Brambley, W. (2013). Applying behavioural economics at the Financial Conduct Authority. FCA Occasional Paper No. 1. https://www.fca.org.uk/publication/occasional-papers/occasional-paper-1.pdf
- Odean, T. (1998). Are Investors Reluctant to Realize Their Losses? The Journal of Finance, 53(5), 1775–1798. https://doi.org/10.1111/0022-1082.00072
- Wang, M., Rieger, M. O., & Hens, T. (2017). The Impact of Culture on Loss Aversion. Journal of Behavioral Decision Making, 30(2), 270–281. https://doi.org/10.1002/bdm.1941
- Gal, D., & Rucker, D. D. (2018). The Loss of Loss Aversion: Will It Loom Larger Than Its Gain? Journal of Consumer Psychology, 28(3), 497–516. https://doi.org/10.1002/jcpy.1047