売買しすぎとは
自分で決めた条件がそろっていないのに、入る回数が増えていく状態です。よくある形は次のとおりです。
- 決めていた回数より多く入っている
- 決済してから次に入るまでの間隔が短くなる
- 入る理由を、入った後に考えている(予定外のエントリー)
- 負けた直後や、退屈な時間に回数が増える
もともと回数の多い手法もあり、値動きの大きい日に回数が増えるのも自然なことです。大事なのは、自分で決めた回数や条件より増えているかどうかです。
気づくための数え方
感覚ではなく、数で見ると気づきやすくなります。まずは「1日の回数」と「予定外のエントリー」の2つだけで十分です。慣れたら、残りの2つも数えてみてください。
1. 1日の回数
自分で決めた回数と比べます。決めていなければ、まず数えるところからで十分です。
2. 予定外のエントリーの数
入る前に「これは決めていた場面か?」と自分に聞き、「いいえ」だったトレードを数えます。
3. 決済から次に入るまでの間隔
間隔がいつもより短くなっている時は、条件を確かめずに入っていることがあります。
4. 回数が増えた時の状況
負けの直後か、退屈な時間か、疲れている時か。回数が増える時の形が見えてきます。
- 今日の回数: ○回(決めていた上限: ○回)
- 予定外のエントリー: ○回
- いちばん短かった間隔: ○分
- 回数が増えたのは: 負けの後/退屈な時間/疲れていた時 など
増えすぎないように、決めておくこと
数えて気づいたら、次の形で決めておくと、その場で迷いにくくなります。
- もし今日の回数が上限に届いたら → 新しくは入らない
- もし決済した直後なら → 決めた時間は入らない
- もし「決めていた場面か?」に「いいえ」なら → 見送る
数字の一例を挙げると、「1日3回まで」「決済後15分は入らない」のような形です。これはおすすめの数字ではありません。ご自身の手法と、数えた記録を見て決めてください。
今日の記録カードに1日の最大回数を入れておくと、上限に近づいた時と届いた時に、文字で知らせます。負けの後に回数が増える人は、取り返しトレードのやめ方も参考にしてください。
回数が増えると、費用も増える
スプレッドや手数料は、1回ごとにかかります。たとえば EUR/USD を 0.1 ロット、スプレッドが 1pips なら、ドル口座で1回あたり約1ドルです。1回あたりの費用が 1(口座の通貨)なら、
- 1日3回 × 20日 = 60回 → 費用 60
- 1日10回 × 20日 = 200回 → 費用 200
- 1日20回 × 20日 = 400回 → 費用 400
1回の費用は小さくても、回数が増えるとその分だけ積み上がります。口座が小さいほど、残高に対する費用の割合は大きくなります。米国の証券業界の自主規制機関(FINRA)も、頻繁な売買は費用が高くなり、手取りを減らしうると注意しています。[5]
ご自身の1回の費用は、pips の価値の計算に、ロット数と、「動いた幅」にスプレッドの pips を入れると、スプレッドの分が分かります(手数料は別です)。ゴールドは、pips ではなく価格の差(ドル)でスプレッドを見ることが多く、業者によって数え方が違います。日をまたぐと、スワップがかかる(または受け取る)ことがあります。口座によっては、スワップのない場合もあります。
研究で分かっていること(短く)
- 米国の個人の株の口座(1991〜96年、約6万6千世帯): 売買の多さで5つに分けた中で、最もよく売買した2割の世帯の、費用を引いた後の年率の成績は 11.4%、市場全体は 17.9% でした(費用を引く前は、売買の多い世帯も少ない世帯も 18.5〜18.7% ほどでした)。[1]
- ブラジルの株価指数の先物: 2013〜15年にデイトレードを始め、少なくとも300日続けた個人のうち、97%が損失(ワーキングペーパーとして公表された研究)。[2]
- インドの株式の先物・オプション: 2021年4月〜2024年3月の3年間(インドの会計年度 FY22〜FY24)に取引した個人の 93%が損失(インドの証券取引委員会 SEBI の発表)。[3]
- 欧州の CFD: 各国の当局の分析で、一般の顧客(リテール)の口座の 74〜89%が損失(2018年)。[4]
国・商品・時代がそれぞれ違い、個人の FX にそのまま当てはまるとは限りません。2つ目から4つ目は、回数と損の関係を調べたものでもありません。言えるのは、回数を増やすことが、成績を良くする近道とは言えないということです。
損が続いて苦しい時や、やめたいのにやめられないと感じる時は、一人で抱えなくて大丈夫です。多くの国や地域に、お金やのめり込みについて相談できる窓口があります。
参考文献
- Barber, B. M., & Odean, T. (2000). Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors. The Journal of Finance, 55(2), 773–806. https://doi.org/10.1111/0022-1082.00226
- Chague, F., De-Losso, R., & Giovannetti, B. (2019). Day Trading for a Living? Working paper. https://ideas.repec.org/p/spa/wpaper/2019wpecon47.html
- Securities and Exchange Board of India (SEBI). Press Release No. 37/2024(2024年9月23日). sebi.gov.in のプレスリリース
- European Securities and Markets Authority (ESMA). ESMA agrees to prohibit binary options and restrict CFDs to protect retail investors(2018年3月27日). https://www.esma.europa.eu/node/84933
- FINRA. Frequent Intraday Trading: Understanding the Basics. https://www.finra.org/investors/investing/investment-products/stocks/day-trading