両建てとは
たとえば、USD/JPY を 0.1ロット買っているとします。そのまま、同じ USD/JPY を 0.1ロット売ると、買いと売りを同時に持つ形になります。これが両建てです。英語では hedging(ヘッジング)と呼ばれます。
ただし、どの口座でもこの形になるわけではありません。売りの注文を出した時に、買いのポジションが決済されてしまう口座もあります。それを決めているのが、次の「ネッティング」と「ヘッジ」の違いです。
ネッティング口座とヘッジ口座の違い
MT5 のヘルプでは、ポジションの数え方(ポジション会計)に2つの方式があると説明しています。[1]
- ネッティング: 1つの銘柄に、同時に持てるポジションは1つです。同じ向きの取引をすると、ポジションの量が増えます。反対の向きの取引をすると、量が減るか、決済されるか、向きが反対になります。[1]
- ヘッジ: 同じ銘柄に、反対の向きも含めて、いくつもポジションを持てます。新しく約定すると、今のポジションはそのままで、新しいポジションが別に増えます。[1]
つまり、両建ての形で持てるのは、ヘッジ方式の口座です。ネッティング方式の口座では、反対の注文は、今のポジションを減らす・決済する注文として扱われます。
MT5 のヘルプでは、どちらの方式かは「口座によって違い、ブローカーによって設定されます」とされています。[1] MT5 の更新情報(2016年)では、方式は口座ごとに決まり、ターミナルのウィンドウの題名の欄と操作ログに表示される、とされています。[5] 今の画面は版によって違うことがあるので、業者の説明でも確かめてください。MT4・スマホのアプリ・ほかの取引ソフトでは、しくみや呼び名が違うことがあります。
決済のしかたも違います。ネッティングでは、同じ銘柄・同じ量の反対の取引で決済します。ヘッジでは、決済したいポジションを選んで決済します。[1] ヘッジ方式の口座には、同じ銘柄の反対のポジション2つをまとめて決済する「Close By(反対ポジションで決済)」という操作もあります。[3]
両建て中の損益: 値動きは打ち消し合い、費用は残る
同じ量の買いと売りを持っていると、値段が上がれば買いは得、売りは損になります。下がれば、その逆です。値動きによる損益は、ほぼ打ち消し合います。
ただし、買いは売りの値段(Bid)で、売りは買いの値段(Ask)で決済します。その差がスプレッドです(スプレッドとは)。そのため、両建てにした時点で、スプレッドの分はマイナスになります。
計算の例
円口座で、USD/JPY を1万通貨ずつ持つ例です。買いは 150.003、売りは 150.000 で入りました。スプレッドは 0.3pips(0.003円)とします。ここでの「値段」は Bid です。買いは Bid より 0.003 高い Ask で入るので、買いは 150.003 から始まります。
値段が 151.000 になった時
買い: (151.000 − 150.003) × 10,000 = +9,970円
売り: (150.000 − 151.003) × 10,000 = −10,030円
合計: −60円
値段が 150.000 でも 149.000 でも、合計は −60円 のままです。これは 0.3pips × 1万通貨 × 2つ分 にあたります。これは2つを別々に決済した場合です。MT5 のヘルプでは、Close By(反対ポジションで決済)で2つをまとめて決済すると、スプレッド1つ分を節約できる、とされています(この例では −30円)。[3]スプレッドが広がると、合計はさらに減ります。ドルやユーロなど円以外の口座でも考え方は同じで、損益は口座の通貨に直して出ます。
持っている間は、ほかの費用も加わります。
- スワップ: 日をまたいで持つと、ポジションごとにスワップが付きます。MT5 では、持っているポジションのスワップは「取引」タブの「スワップ」の欄に出ます。[3] 買いと売りのスワップは、同じ大きさで打ち消し合うとは限りません。たとえば、買い +15円/日、売り −20円/日なら、差し引き 1日 −5円、30日で −150円 です(作った数字です)。スワップのしくみはスワップポイントとはにまとめています。
- 手数料: 取引ごとに手数料がかかる口座では、買いと売りの2つのポジションそれぞれにかかります。いつ・どうかかるか(入りと出・日ごと・月ごと)は業者によって違います。[3]
どれもこの記事での計算の例です。スプレッド・スワップ・手数料は、業者・口座・日で変わります。1回ごとの費用の数え方は取引の費用の数え方にあります。
必要証拠金の扱いは、業者で違う
MT5 のヘルプでは、同じ銘柄の反対向きのポジションを「ヘッジされた(カバーされた)」ポジションと呼んでいます。その証拠金の計算には2つの方式があり、どちらを使うかは業者が決める、とされています。[2]
- 銘柄の仕様の「ヘッジマージン」の欄の値に従って、ヘッジされた量の1ロットごとに証拠金がかかる方式。ヘルプでは、当初証拠金が指定されていない(0の)時は、この欄に契約サイズを書き、0にするとヘッジされた量には証拠金がかからない、とされています。[2]
- 「大きい方の側で計算する」方式。買いの側と売りの側の証拠金を計算し、いちばん大きい値を証拠金にします。[2]
つまり、両建て中の必要証拠金は、2つのポジションを足した額になるとは限らず、業者・銘柄の設定で変わります。銘柄の仕様の見方はロットとはの回で、証拠金と維持率のしくみは証拠金・維持率とはの回で紹介しています。必要な証拠金は証拠金の計算で確かめられます。
証拠金が小さく済む設定でも、スプレッド・スワップ・手数料で有効証拠金は少しずつ減ります。片方だけを決済すると、残ったポジションには値動きの損益がそのまま出ます。維持率が下がった時のしくみはロスカットとはにあります。
国・地域で決まりが違うことがある
両建てを口座で持てるかは、業者や口座の方式だけでなく、国・地域の決まりでも変わることがあります。
ここでは、米国の例を1つだけ挙げます。米国では、NFA(全米先物協会)の規則 2-43(b) が、会員の FX 業者(Forex Dealer Member)は、客の口座で反対のポジションを持ち続けてはならず、先に入ったものから順に(先入れ先出しで)相殺しなければならない、と定めています。[4] ただし、客の求めがあれば、同じ量の取引どうしを相殺することもできます(その場合も、その量の中で一番古い取引と相殺します)。決済の順番と損益の数え方は、米国の FIFO ルールとはにまとめています。
ほかの国・地域の決まりは、この記事では確かめていません。扱いは国・地域や業者で違うので、自分の口座の業者の説明で確かめてください。
記録で確かめる(決めるのはご自身)
MT5 の履歴は、ポジションの一覧・注文の一覧・約定の一覧の形で見られます。[3] ヘッジ方式の口座では、両建ての買いと売りは別々のポジションとして並びます。
- 両建て全体の損益: 買いと売り、2つのポジションの損益を足します。
- 費用: 2つ分のスワップと手数料も足します。約定の一覧の「手数料」の欄には、約定のすぐあとにかかった手数料が出ます。[3]
- 理由: なぜ両建てにしたか、いつ・どちらを外したかを、メモに残しておきます。
両建て全体の損益 = 買いの損益 + 売りの損益 + 2つ分のスワップ + 2つ分の手数料
何回か記録すると、両建てにした取引で、費用がどれくらいかかったか、外したあとにどうなったかを、自分の記録で見られます。
pips の金額はpips の計算で、スワップの金額はスワップの計算で確かめられます。注文の種類の一覧は注文の種類の回にあります。別々の通貨ペアで、同じ通貨を重ねて売り買いしていないかの数え方は、同じ通貨を重ねて持っていないかにあります。
参考文献
- MetaQuotes. 基本理念 - 取引操作 - MetaTrader 5のヘルプ. https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading/general_concept
- MetaQuotes. 証拠金計算: リテール外国為替、先物 - MetaTrader 5のヘルプ. https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading_advanced/margin_forex
- MetaQuotes. 取引の実行 - 取引操作 - MetaTrader 5のヘルプ. https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading/performing_deals
- National Futures Association. Rule 2-43. Forex Orders(NFA Rulebook). https://www.nfa.futures.org/rulebook/rules.aspx?RuleID=RULE%202-43&Section=4
- MetaQuotes. MetaTrader 5 build 1325 の更新情報(2016年). https://www.metatrader5.com/ja/releasenotes/terminal/1325