レバレッジとは
日本の金融先物取引業協会は、「取引額が証拠金の何倍か」を示した数字をレバレッジと説明しています。[1] 英国の金融行為監督機構(FCA)も、レバレッジを「資産の価値のごく一部を払うだけで、その資産の値動きにさらされること」と説明しています。[2]
たとえば、協会の例では、1万ドルを100円で買うと取引の金額は100万円で、業者に4万円以上の証拠金を預ける必要があります。[1] 100万円 ÷ 4万円 = 25倍です。
損益は、預けた4万円ではなく、取引した100万円分の値動きで決まります。そのため、レバレッジを使うと、使わない時と比べて、同じ値動きでも口座に対する損益が大きくなります。金融庁も、FX は証拠金を上回る損失が出るおそれのある、リスクの高い商品だと説明しています。[3]
必要な証拠金とレバレッジの式
MT5 の公式ヘルプでは、FX の必要な証拠金を、次の式で計算するとしています。[4]
必要な証拠金 = ロット数 × 契約サイズ ÷ レバレッジ
ヘルプの例では、契約サイズ 100,000・レバレッジ 1:100 で EUR/USD を1ロット買うと、1 × 100,000 ÷ 100 = 1,000ユーロです。[4] この額は通貨ペアの左側の通貨(ここではユーロ)で出て、口座の通貨が違う時は、その時のレートで換算されます。[4]
「ロット数 × 契約サイズ」は、取引する通貨の量です(ロットとは)。つまり、この式のレバレッジは、取引の金額の何分の1を証拠金として置くかを決めています。25倍なら4%、30倍なら約3.33%です。証拠金の画面の数字の読み方は証拠金・有効証拠金・維持率とはの回で説明しています。
最大のレバレッジと、実効レバレッジの違い
「レバレッジ」という言葉は、次の2つの意味で使われます。この記事では、2つを分けて呼びます。
- 最大のレバレッジ: 業者が口座ごとに決める倍率です。上の式に入る数字で、必要な証拠金の大きさを決めます。一般の顧客(リテール)の口座では、国・地域の当局が上限を決めていることが多いです(国・地域ごとのレバレッジの上限)。
- 実効レバレッジ: 口座全体で、実際にどれだけの金額を動かしているかです。この記事では、次の式で計算します。
実効レバレッジ = ポジションの金額の合計 ÷ 有効証拠金
有効証拠金は、含み損益まで入れた口座の今の価値です(含み損・含み益とは)。ポジションの金額は口座の通貨に直して計算します。売りと買いを両方持っている時の数え方は業者や考え方で違うので、ここでは1つのポジションの例で説明します。
図のように、同じポジションなら、最大のレバレッジが25倍でも100倍でも、値動きに対する損益は同じです。最大のレバレッジで変わるのは、必要な証拠金の額と、その口座で持てるポジションの大きさです。最大のレバレッジが高い口座では、少ない証拠金で大きなポジションを持てるので、実効レバレッジも高くしやすくなります。
実効レバレッジの大きさは、口座のお金に対してどれだけのロットを持つかで決まります。同じ口座でも、ロットを変えれば実効レバレッジは変わります(ロットとは)。
実効レバレッジが高いほど、口座に対する損益が大きい
値段が1%動いた時の損益は、ポジションの金額の1%です。それを有効証拠金で割ると、口座に対する割合になります。
口座に対する損益の割合 = 値動きの割合 × 実効レバレッジ
値動きが得の向きなら同じ割合で増え、損の向きなら同じ割合で減ります。この式から、逆の向きに「100% ÷ 実効レバレッジ」動くと、有効証拠金が0になる計算です。たとえば実効レバレッジ20倍なら5%、5倍なら20%です。同じ式で、実効50倍なら2%、500倍なら0.2%の値動きで、口座の100%に当たる額が動きます(この記事での計算で、おすすめではありません)。実際には、その前にロスカットになることが多いですが、値段が飛ぶと間に合わないこともあります(ロスカットとは)。
計算の例
どちらも、この記事での計算の例です。どの倍率やロットで取引するかを勧めるものではありません。1ロット = 10万通貨の口座とし、スプレッド・手数料・スワップは入れていません。
- 例1 円の口座で USD/JPY を 0.1 ロット: 有効証拠金は 100,000円。0.1 × 100,000 = 10,000ドル分を 150.00 で持つと、ポジションの金額は 10,000 × 150.00 = 1,500,000円です。実効レバレッジは 1,500,000 ÷ 100,000 = 15倍。値段が1%(1.50円)動くと、損益は 10,000 × 1.50 = 15,000円で、口座の 15%です。最大のレバレッジが25倍(例)なら、必要な証拠金は 1,500,000 ÷ 25 = 60,000円です。
- 例2 ドルの口座で EUR/USD を 0.05 ロット: 有効証拠金は 1,000ドル。0.05 × 100,000 = 5,000ユーロ分を 1.0850 で持つと、ポジションの金額は 5,000 × 1.0850 = 5,425ドルです。実効レバレッジは 5,425 ÷ 1,000 = 約5.4倍。値段が1%(0.01085)動くと、損益は 5,000 × 0.01085 = 54.25ドルで、口座の 約5.4%です。最大のレバレッジが30倍(例)なら、必要な証拠金は 5,000 ÷ 30 ≒ 166.67ユーロで、1.0850 で換算して約180.83ドルです。
例1は、最大のレバレッジ(25倍)より実効レバレッジ(15倍)が低くても、1%の値動きで口座が15%動くことを示しています。損益の計算のしかたはpips・ロットと損益の計算のしかたの回にまとめています。
維持率・ロスカットとのつながり
MT5 の公式ヘルプでは、証拠金維持率を「有効証拠金 ÷ 証拠金 × 100」としています。[5] 必要な証拠金が上の式(ポジションの金額 ÷ 最大のレバレッジ)で決まり、1つのポジションだけを持ち、待機注文がなく、証拠金を今のレートで計算する時(MT5 の FX の方式)は、維持率は次のように書きかえられます(この記事での計算です)。
維持率 = 最大のレバレッジ ÷ 実効レバレッジ × 100
例1では、25 ÷ 15 × 100 ≒ 166.7%です(100,000 ÷ 60,000 × 100 と同じです)。含み損で有効証拠金が減ると、実効レバレッジが上がり、維持率が下がります。ポジションを増やした時も同じです。維持率が業者の決めた水準まで下がると、知らせが来たり(マージンコール)、自動で決済されたり(ストップアウト・ロスカット)します。くわしくはマージンコールとストップアウトの違いの回で説明しています。
国・地域で上限が違う理由
一般の顧客(リテール)の口座の最大のレバレッジには、多くの国・地域で当局の上限があります。日本では、金融庁に登録した業者が個人と取引する時、取引の金額の4%以上の証拠金が必要で、25倍が上限です。[3] 欧州証券市場監督機構(ESMA)は2018年に、一時的な措置(3か月ごとに延長を判断)として、主な通貨ペアは30倍などの上限を決め、その理由として、当時の調べで一般の顧客(リテール)の口座の74〜89%が損をしていたことを挙げています。[6] その後、EU の各国の決まりに置き換わったことは、国・地域ごとのレバレッジの上限の回に書いています。英国の FCA は、ESMA の一時的な措置と同じ方法で上限の案を決めたと説明しています。[2] 1日の値動きで「最初の証拠金の50%」での決済に届く見込みに備えられるだけの証拠金を求める、という考え方で、過去の値動きのデータをもとにしています。[2]
これらの上限は、一般の顧客(リテール)向けです。英国では、この決まりは業者と一般の顧客(リテール)との取引に当てはまるため、業者がプロの顧客に分類した口座は対象外です。[7] オーストラリアでは、プロ・ソフィスティケイテッド(一定の資産や経験のある人)などのホールセールの顧客には当てはまりません。[8]
上限の高さや、上限を設けるかどうか自体も、国・地域で違います。各国の上限は、当局の資料で確かめた国・地域ごとのレバレッジの上限の一覧にまとめています。
自分で確かめておくこと
- 自分の口座の最大のレバレッジ: 口座の説明や、業者のサイトの取引の条件に書かれています。銘柄ごとに違うこともあります。
- 今の実効レバレッジ: ポジションの金額の合計 ÷ 有効証拠金。ロットを上げた時や、含み損が増えた時に上がります。
- ロスカットの水準: 何%で自動で決済されるか(ロスカットとは)。
何倍で取引するかは、この記事では決めません。決めるのはご自身です。
計算はツールで
- ロットとレバレッジから、必要な証拠金を出す: 証拠金の計算
- 1回の取引で失ってもよい額から、ロットを出す: ロット計算
- 今の維持率から、ロスカットの水準まであと何 pips かを出す: ロスカットまでの距離
参考文献
- 一般社団法人 金融先物取引業協会. #3 証拠金取引とレバレッジ効果について. https://www.ffaj.or.jp/learning/?p=15
- Financial Conduct Authority (FCA). (2018年12月). CP18/38: Restricting contract for difference products sold to retail clients and a discussion of other retail derivative products(1.10、3.23 と注24). https://www.fca.org.uk/publication/consultation/cp18-38.pdf
- 金融庁. いわゆる外国為替証拠金取引について. https://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/
- MetaQuotes. 証拠金の計算: 外国為替(MetaTrader 5 ヘルプ). https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading_advanced/margin_forex
- MetaQuotes. 取引の実行 - 取引操作 - MetaTrader 5のヘルプ. https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading/performing_deals
- European Securities and Markets Authority (ESMA). ESMA agrees to prohibit binary options and restrict CFDs to protect retail investors (2018年3月27日). https://www.esma.europa.eu/node/84933
- Financial Conduct Authority (FCA). FCA Handbook, COBS 22.5. https://www.handbook.fca.org.uk/handbook/COBS/22/5.html
- Australian Securities and Investments Commission (ASIC). Explanatory Statement, ASIC Corporations (Product Intervention Order—Contracts for Difference) Instrument 2020/986(2020年10月23日登録). https://legislation.gov.au/F2020L01338/asmade/2020-10-23/es/original/pdf