Bid・Ask・スプレッド
MT5 の気配値表示では、通貨ペアごとに Bid と Ask が並んでいて、スプレッドの列で2つの差を見られます。[1] 買う時は高い方の Ask で、売る時は低い方の Bid で約定します(約定 = 注文が成立すること)。
たとえば、EUR/USD を 0.1 ロット(1万通貨)、ドル口座で取引して、スプレッドが 1.5pips(pips は値動きの幅の単位)なら、1回の取引で約1.5ドルが費用になります(この記事での計算例です)。1ロットの大きさは業者によって違い、口座の通貨が違えば、その時のレートで換算した額になります。1か月分の費用の数え方は取引の費用の数え方にまとめています。
チャートは Bid で描かれる
MT5 の場合、ヘルプでは、チャートの足はふつう Bid の値で作られ、買いで入る時と売りを決済する時には、いつも Ask が使われると説明されています。チャートの設定で、Ask の線を表示することもできます。[2] ほかのアプリを使っている人は、そのアプリのヘルプで確かめてください。
このため、売りのポジションの損切りや利確は、Ask が届いた時に決まります。[5]チャート(Bid)では損切りの値段に届いていないように見えても、Ask は届いていた、ということがあります。スプレッドが広がっている時ほど、この差は大きくなります。
EUR/USD を売って、損切りを 1.0850 に置いたとします。チャート(Bid)の一番高い所は 1.0849 で、損切りに届いていないように見えます。でもその時スプレッドが 2pips 広がっていれば、Ask は 1.0851 まで上がっていて、損切りの 1.0850 に届いています。そのため、損切りで決済されます。
スプレッドが広がる場面
スプレッドは、いつも同じとは限りません。
- 重要な発表の直前: 銀行どうしが為替を取引する仕組みの1つ(EBS)の2012年のデータで、ユーロ/ドル・ユーロ/円・ドル/円を調べた研究では、予定された発表の時には、発表のころ(値動きが急に増え始める時)に向けた数十秒の間にスプレッドが平均で広がっていき、発表の直後に急に狭まったと報告されています。[3] この研究の主な目的は値動きが急に増える時を見つける方法で、スプレッドはその一部として調べられたものです。また、個人向けの業者の値段とは別の、銀行どうしの市場のデータです。
- 市場が混乱した時: オーストラリアの中央銀行は、2020年3月の混乱した時期に、為替のスプレッドが大きく広がり、取引できる量が減ったと報告しています。豪ドルは、特にオーストラリアの取引時間の始めのころに状態が悪く、日本の市場が開くと良くなったとしています。[4] これは混乱した時期の話で、ふだんもそうなるとは限りません。
ここでいう「発表」の代表は、経済指標の発表です。経済指標は、国の役所などが、景気・仕事・物価などの数字を、決まった日時に出すものです。たとえば米国の雇用統計は、公表する日と時刻が、前もって予定表で公表されています。[6] 発表の数字は多くの人が前もって予想していて、その予想はもう値段に入っていると考えられています。そのため、発表で値段が動くのは、主に予想とずれた分に反応するためだと考えられています(豪ドルを調べた研究では、為替の市場は新しい知らせにとても速く反応する傾向があるとしています)。[7] ただし、どちらの向きにどれだけ動くかは、前もって分かりません。
広がり方は、業者・口座・時期によって違います。自分の口座でどうなっているかは、MT5 の気配値表示のスプレッドの列で、時間を変えて見てみると分かります。
自分の記録で確かめる(決めるのはご自身)
いつ取引するか、どの口座を使うかは、この記事では決めません。スプレッドの影響を知りたい時は、次のことを記録しておくと、後から見返せます。
- 入った時のスプレッド(気配値表示の数字)
- 思った値段と、実際に約定した値段の差
- 発表の前後など、どんな時間に入ったか
スプレッドを含めた費用で、損益がゼロになる勝率がどう変わるかは損益分岐の勝率で、ロットごとの金額はロット計算で確かめられます。
参考文献
- MetaQuotes. Market Watch(MetaTrader 5 ヘルプ). https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/trading/market_watch
- MetaQuotes. Chart Settings(MetaTrader 5 ヘルプ). https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/charts_advanced/charts_settings
- Rambaldi, M., Filimonov, V., & Lillo, F. (2018). Detection of intensity bursts using Hawkes processes: An application to high-frequency financial data. Physical Review E, 97, 032318. https://arxiv.org/abs/1610.05383
- Reserve Bank of Australia. (2020). Box B: Recent Developments in Foreign Exchange Markets. Statement on Monetary Policy – May 2020. https://www.rba.gov.au/publications/smp/2020/may/box-b-recent-developments-in-foreign-exchange-markets.html
- MetaQuotes. General Concepts(MetaTrader 5 ヘルプ). https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/trading/general_concept
- U.S. Bureau of Labor Statistics. Schedule of Releases for the Employment Situation(米国労働統計局 雇用統計の公表予定). https://www.bls.gov/schedule/news_release/empsit.htm
- Clifton, K., & Plumb, M. (2008). Economic Data Releases and the Australian Dollar. Reserve Bank of Australia Bulletin, April 2008. https://www.rba.gov.au/publications/bulletin/2008/apr/1.html