いま「マージンコール」と出ている人へ
- ポジションはまだ残っています: マージンコールは警告で、それだけではポジションは決済されません(この記事での説明)。MT5 では、マージンコールかストップアウトの状態になると口座の行が赤くなり、ストップアウトでは損失の最も大きいポジションから決済されます。[1] ほかのアプリを使っている人は、言葉の意味を業者の説明で確かめてください。
- 今の維持率を見る: 取引アプリの口座の数字に出ています(取引アプリの画面の見方)。
- 自分の業者のロスカットの水準を見る: 維持率が何%を下回ると自動で決済されるかは、業者の説明に書いてあります。
維持率を戻す方法は、計算のしくみ上、入金するか、ポジションを減らすかです(下の「何が違うのか」)。何もしなければ、値段の動きしだいで、維持率はそのままか、さらに下がるか、戻ります。どれを選ぶかは、ご自身で決めてください。
2つの水準
この記事では、2つの水準を次のように説明します。水準の数字は業者が決めます。
- マージンコールの水準: これを下回ると、口座はマージンコールの状態になります。警告で、ポジションは残ります(この記事での説明)。英国の FCA の手引きも、マージンコールを出すことを、ポジションの決済とは別の項目として挙げています。[2]
- ストップアウトの水準: これを下回ると、ポジションが自動で決済されます。MT5 のヘルプでは、ストップアウトの時、(先入れ先出しの設定が無い)ふつうの設定では、損失が最も大きいポジションから先に決済されると説明しています。[1] 全部が決済されるか一部か、どの順番かは、業者の条件で違うことがあります。
MT5 の画面では、口座がどちらかの状態になると、ツールボックスの口座の数字の行が赤く表示されます。[1] 色だけではどちらの状態か分からないので、維持率の数字も見てください。
何が違うのか
- マージンコール: 警告の状態です。ポジションは残っているので、ここから維持率が戻ることもあります。
- ストップアウト: ポジションが自動で決済されます。決済されたポジションの損失は、その時点で確定します。
証拠金維持率は「有効証拠金 ÷ 証拠金 × 100」です。[1] たとえば、有効証拠金(口座の残高に今の損益を足し引きしたもの)が10万円、ポジションに必要な証拠金が4万円なら、10万 ÷ 4万 × 100 = 250% です。この式から、維持率を戻すには、入金して有効証拠金を増やすか、ポジションを減らして必要な証拠金を減らすことになります。言葉のくわしい意味は証拠金・有効証拠金・余剰証拠金・維持率とはの回で説明しています。
水準は誰が決めるのか
水準の数字は、業者と、国・地域の決まりによって違います。
- 英国: 金融行為監督機構(FCA)の規則は、一般の顧客(リテール)の口座の純資産(有効証拠金にあたる額)が必要な証拠金の50%を下回らないようにすることを業者に求めています。[2] 同じ節の手引き(22.5.16G)は、マージンコールを出すことを、ポジションの決済とは別の項目として挙げています。[2] 英国の業者がつぶれてお金を返せない時は、金融サービス補償機構(FSCS)が、対象の投資について1人・1社あたり最大8万5,000ポンドまで払うことがあります。値動きによる損は対象外です。[8] ストップアウトに苦情がある時は、まず業者に出し、そのあと金融オンブズマン(FOS)に無料で持ち込めます。[9]
- EU(欧州連合): 欧州証券市場監督局(ESMA)の2018年の決定では、口座の資金が必要な証拠金の半分を下回ったら、ポジションを決済することを定めました。[4] これは一時的な措置で、2019年から2020年にかけて、EU の各国の当局が順に自国の決まりを設けて置き換えました。[7]
- オーストラリア: 2021年3月29日から、証券投資委員会(ASIC)の命令が、一般の顧客(リテール)の CFD のポジションを、お金の全部かほとんどを失う前に決済する仕組みを、業者の間でそろえています。[10] 水準は50%で、口座の純資産が、持っているポジションの当初証拠金の合計の50%を下回ったら、業者は市場の状況が許す限りすぐに、ポジションを1つ以上決済しなければなりません。プロ・ソフィスティケイテッド(一定の資産や経験のある人)・ホールセールの顧客には当てはまりません。[11] ASIC は、紛争解決の決まりの対象の業者はオーストラリア金融苦情機関(AFCA)に加入しなければならず、AFCA は業者が社内で解決できなかった苦情を扱える、としています。[12] 頼る前に、その業者が AFCA に加入しているか確かめてください。
- 日本: 金融先物取引業協会の規則では、口座の資金が「必要証拠金 × 業者の定めたロスカット水準」を下回ったら、直ちにロスカットの手続きをすると定めています。[5] 金融庁も、評価損があらかじめ決めた水準に達すると、業者が建玉(持っているポジション)を強制的に決済すると説明しています。[6]
ここに挙げたのは4つの例だけです。ほかの国・地域では決まりが違うことがあり、決まった水準が無い所もあるかもしれません。自分の業者と、住んでいる所の当局の説明で確かめてください。
日本の業者には、マージンコールにあたる知らせのほかに、「追証(追加の証拠金)」という言葉を使う所もあります。何を指すか、いつまでに何をすればよいかは業者によって違うので、自分の業者の説明で確かめてください。ロスカットのしくみと、国・地域ごとの違いはロスカットとはの回でくわしく説明しています。
自分で確かめておくこと
- 2つの水準: マージンコールとストップアウト(ロスカット)が、それぞれ維持率何%か
- 知らせの届き方: アプリの通知・メールなど、どう知らされるか
- 今の維持率: 取引アプリの口座の数字で見られます(取引アプリの画面の見方)
今のポジションで、ロスカットの水準まであと何 pips かを出すにはロスカットまでの距離のツールが使えます。
参考文献
- MetaQuotes. 取引の実行 - 取引操作 - MetaTrader 5のヘルプ. https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/trading/performing_deals
- Financial Conduct Authority. FCA Handbook, COBS 22.5.13R・22.5.16G(2019年8月1日から). https://handbook.fca.org.uk/handbook/cobs22/cobs22s5
- 一般社団法人 金融先物取引業協会. 学ぼう!FX #9 ロスカット取引について. https://www.ffaj.or.jp/learning/?p=27
- European Securities and Markets Authority. (2018). Notice of ESMA's Product Intervention Decisions in relation to contracts for differences and binary options (ESMA35-43-1135、2018年5月22日の決定). https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/library/esma35-43-1135_notice_of_pi_decisions_on_cfds_and_binary_options.pdf
- 一般社団法人 金融先物取引業協会. (2011年1月26日制定、2020年6月17日一部改正、同年12月1日施行). 金融先物取引業務取扱規則第25条の3に関する細則(外国為替証拠金取引に係るロスカット取引関係). https://www.ffaj.or.jp/wp-content/uploads/2019/06/ffaj-gyotori25_3-saisoku-20200617.pdf
- 金融庁. (2020年2月21日更新). いわゆる外国為替証拠金取引について. https://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/
- European Securities and Markets Authority (ESMA). Product intervention. https://www.esma.europa.eu/investor-corner/product-intervention
- Financial Services Compensation Scheme (FSCS). Investments. https://www.fscs.org.uk/what-we-cover/investments/
- Financial Ombudsman Service. How to complain. https://www.financial-ombudsman.org.uk/consumers/how-to-complain
- Australian Securities and Investments Commission. (2020年10月). 20-254MR ASIC product intervention order strengthens CFD protections. https://www.asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2020-releases/20-254mr-asic-product-intervention-order-strengthens-cfd-protections
- Australian Securities and Investments Commission. (2020). Explanatory Statement, ASIC Corporations (Product Intervention Order—Contracts for Difference) Instrument 2020/986(2020年10月23日登録). Federal Register of Legislation. https://legislation.gov.au/F2020L01338/asmade/2020-10-23/es/original/pdf
- Australian Securities and Investments Commission. Dispute resolution. https://asic.gov.au/regulatory-resources/financial-services/dispute-resolution/