まず、両替で考える
外国へ旅行する前に、円を米ドルに両替したことはありますか。両替した後で円とドルの交換の値段が変わると、円に戻したときの金額も変わります。
FX は、この「交換の値段の差」を使う取引です。ただし実際の FX では、ふつうは通貨そのものを受け取らず、取引を終えたときの差額だけが、利益か損失として口座に反映されます。
取引の流れ
FX の1回の取引は、おおまかに次の5つの段に分けられます。
- 口座: FX の業者に開く、取引のための口座です。
- 証拠金: 取引のために口座に預けておくお金です。くわしくは、この記事の後半で説明します。
取引を終えるときは、始めたときと反対の売買をします。たとえばユーロを米ドルで買ったなら、ユーロを米ドルで売って終えます。[2] 始めたときと終えたときの値段の差が、利益か損失になります。
通貨ペアの読み方
FX の値段は、「EUR/USD」のように、2つの通貨を組にした形で示されます。1つの通貨を買うときは、もう1つの通貨を売っているからです。[2] この組を通貨ペアと呼びます。
通貨は、EUR(ユーロ)、USD(米ドル)、JPY(日本円)、GBP(英ポンド)のように、アルファベット3文字で書かれます。[2] よく出てくる言葉は用語集でも引けます。
「買い」と「売り」
FX では、「買い」からでも「売り」からでも取引を始められます。通貨ペアを買うことは、左の通貨を買って右の通貨を売ることで、通貨ペアを売ることは、その反対です。[2]
「持っていないのに売る」のは不思議に感じるかもしれません。FX の「売り」は、先に売っておき、後で買い戻して終える取引です。売った値段より安く買い戻せれば、その差が利益になります。たとえば150円で売っておき、149円で買い戻せば、1円分の差が利益です。順番が「売り→買い」と逆になるだけで、値段が下がると考えたときに使う取引です。
たとえば USD/JPY(米ドルと円)で、1ドル150.00円のときに1万ドル分を買い、151.00円になったときに売って終えると、(151.00 − 150.00)× 1万 = 1万円の利益です。同じ1万ドル分を150.00円で売りから始めて、151.00円で買い戻すと、1万円の損失です(ここでの例で、費用は入れていません)。
このように、値段の差 × 取引の量が損益になります。[2] 自分の取引の量で計算するには損益の計算のツールが使えます。くわしい計算はpips・ロットと損益の計算の回で説明します。
買う値段と売る値段
業者の画面には、ふつう2つの値段が並んでいます。売るときの値段(Bid、ビッド)と、買うときの値段(Ask、アスク)です。[2]
たとえば EUR/USD が 1.2170/1.2178 と出ていれば、1ユーロを1.2170米ドルで売れて、1.2178米ドルで買える、という意味です。[2] この差をスプレッドと呼びます。買ってすぐ売ると、値段が動いていなくても、この差の分だけ損になります。スプレッドが広がる場面は、スプレッドとはの回で見ていきます。
預けるお金より大きな取引ができる
FX では、取引の全額ではなく、一部のお金(証拠金)を預けて取引します。必要な証拠金は、取引する国・地域によって違います。たとえば日本では、個人が取引する場合、取引金額の4%以上の証拠金を預けて、保つ必要があります。[1] 4%なら、1万円の証拠金で25万円分まで取引できる計算です(25倍)。上限は国・地域によって違います(国・地域ごとのレバレッジの上限)。
預けたお金より大きな量を動かせることを、レバレッジと呼びます。[2] レバレッジが高いと、値段が少し動いただけで、預けたお金に比べて大きな利益にも損失にもなります。[2] 金融庁は、証拠金以上の損失が出るおそれのある、とてもリスクの高い商品だと説明しています。[1] 米国の自主規制団体の資料も、最初に預けたお金をすべて失い、さらに追加の損失を負うこともある、と書いています。[2] 預けたお金を超えた損失をどう扱うかは、国・地域の決まりや業者によって違います(ロスカットとは)。しくみは証拠金・有効証拠金・維持率とはの回でくわしく説明します。
損をしている人も多い
当局が公表した数字では、一般の顧客(リテール)の取引で損をしている人の割合は、少なくありません。
- 米国: 米国の商品先物取引委員会(CFTC)は、登録業者の顧客のうち、1年間で利益が出たのは約3分の1で、約3分の2は損失だった、としています(2021年4〜6月期から2022年1〜3月期)。[3]
- 欧州: 欧州証券市場監督局(ESMA)は、各国の当局の分析で、一般の顧客(リテール)の口座の74〜89%がふだん損失を出していた、としています。[4] これは FX だけでなく、差額だけをやりとりする取引(CFD)全体の数字です。
数字は、調べた国・時期・取引の種類によって違い、どの人にもあてはまる数字ではありません。ただ、始める前に知っておく価値のある数字です。
この講座で次に読むこと
この講座では、ここから、取引画面とローソク足の見方、業者の選び方で気をつけること、損益の数え方、証拠金とレバレッジ、注文の順に、1つずつ見ていきます。次の回へは、このページの下の案内から進めます。どの回も、売買の判断や相場の予想は書きません。自分で決めるための材料として使ってください。
参考文献
- 金融庁. (2020年2月21日更新). いわゆる外国為替証拠金取引について. https://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/
- National Futures Association(米国の先物業界の自主規制団体). (2004). Trading in the Retail Off-Exchange Foreign Currency Market: What Investors Need to Know(PDF の2・4〜7枚目). 米国の取引所 Nasdaq のサイトに置かれた写し: https://www.nasdaqtrader.com/content/phlxwco/forex.pdf
- U.S. Commodity Futures Trading Commission. Customer Advisory: Eight Things You Should Know Before Trading Forex. https://www.cftc.gov/LearnAndProtect/AdvisoriesAndArticles/CustomerAdvisory_MustKnowForex.html
- European Securities and Markets Authority. (2018, March 27). ESMA agrees to prohibit binary options and restrict CFDs to protect retail investors. https://www.esma.europa.eu/press-news/esma-news/esma-agrees-prohibit-binary-options-and-restrict-cfds-protect-retail-investors