なぜ遅れるのか
移動平均は、直近の何本かの終値を平均したものです。たとえば20本の単純移動平均は、今の足を含む直近20本の終値を足して20で割ります。[1] 今の値だけでなく、少し前の値も同じ重さで入るので、線は今の価格より遅れて動きます。
RSI や MACD、ボリンジャーバンドなども、過去の価格や移動平均から計算します(しくみは主なインジケーターの仕組みにまとめています)。過去から計算する以上、どれも多かれ少なかれ遅れます。これは設定の良し悪しではなく、計算のしかたから来る性質です。
どれくらい遅れるのか
N本の単純移動平均に入っている値の「古さ」を平均すると、(0 + 1 + … + (N − 1)) ÷ N = (N − 1) ÷ 2 本です。そのため、まっすぐ上がり続ける値動きでは、移動平均はおよそ (N − 1) ÷ 2 本前の価格を指します。指数移動平均(EMA)も、よく使われる係数 α = 2 ÷ (N + 1) で計算すると、重みをつけた古さの平均が (1 − α) ÷ α = (N − 1) ÷ 2 本になり、目安は同じです(どちらも、ここでの計算です)。
| 期間 | 遅れの目安(本) | 5分足で | 1時間足で | 日足で |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 2 | 10分 | 2時間 | 2営業日 |
| 20 | 9.5 | 約48分 | 9.5時間 | 9.5営業日 |
| 50 | 24.5 | 約2時間 | 約1日 | 24.5営業日 |
| 200 | 99.5 | 約8時間 | 約4日 | 99.5営業日 |
表は横にスクロールできます。日足・1時間足の日数は、市場が閉まっている時間を除いて数えています。
これは、値動きがまっすぐな時の目安です。実際の値動きは曲がったり止まったりするので、遅れ方は場面で変わります。それでも、期間を長くするほど線はなめらかになり、その代わりに遅れが大きくなるという関係は変わりません。期間を短くすると遅れは小さくなりますが、細かい上下にも反応しやすくなり、向きが何度も入れ替わります。
合図が「ずれる」のはなぜか
移動平均の向きや交差を合図にすると、合図が出るのは、価格がもう動いた後になります。図の例では、価格が折り返してから20本の線が下を向くまでに約10本かかっていて、その間に価格はかなり下がっています。
もう1つのずれは、足が確定するまで、今の足の値が動き続けることです。今の足のインジケーターの値は、価格が動くたびに変わります。足の途中で合図が出ても、足が閉じる時には消えていることがあります。合図を「足が閉じた時」で見るか「足の途中」で見るかで、入る場所は変わります。
急な値動きに弱いのはなぜか
経済指標の発表などのあとには、価格が短い時間で大きく動くことがあります。1992年1月〜1998年12月の米ドルと主な5通貨の5分ごとの値動きを調べた研究では、米国の経済指標が予想と違った時、発表の直後に価格が一気に跳ぶように動いたと報告されています。[2]
平均は、1本の大きな動きを薄めて取り込みます。そのため、急な動きの時ほど、インジケーターと価格の差が大きく開きます。インジケーターが向きを変える頃には、動きの大半が終わっていることがあります。また、急な動きの時は、スプレッドが広がったり、注文が思った価格より悪い価格で約定したりすることもあります(費用の数え方は取引の費用の数え方)。
遅れとどう付き合うか(決めるのはご自身)
遅れはなくせません。できるのは、遅れの大きさを知って、自分の入り方がどれくらいずれているかを数えることです。
- 遅れを時間に直す: 上の表のように、期間と足の長さから、何時間ぶん遅れるかを出しておく
- 合図を見る時を決める: 「足が閉じた時だけ見る」か「足の途中でも見る」かを、先に決めておく
- 予定されている発表の時間を知っておく: 各国の当局や中央銀行が公表する発表の予定を確かめる。市場が開いている時間は市場の時間で見られます
- ずれを記録する: トレードのメモに、合図が出た時間と実際に入った時間を書き、そのときの気持ち(焦った・待てた など)も残す。1週間ほどで、自分がどれくらい遅れて、または早まって入っているかが見えてきます
どの期間やインジケーターを使うか、使うかどうかは、ご自身で決めてください。記録した損益の一覧は、取引履歴の統計で、勝率や平均の損益にまとめられます。
参考文献
- MetaQuotes. Moving Average(MetaTrader 5 ヘルプ). https://www.metatrader5.com/en/terminal/help/indicators/trend_indicators/ma
- Andersen, T. G., Bollerslev, T., Diebold, F. X., & Vega, C. (2003). Micro Effects of Macro Announcements: Real-Time Price Discovery in Foreign Exchange. American Economic Review, 93(1), 38–62. https://doi.org/10.1257/000282803321455151