移動平均と交差
移動平均は、直近の何本かの終値を平均した線です(くわしくは主なインジケーターの仕組み)。期間が短い線は価格に近く動き、期間が長い線はゆっくり動きます。
価格が上がり続けると、短い線が先に上がり、やがて長い線の上に出ます。これがゴールデンクロスです。反対に、価格が下がり続けると、短い線が先に下がって長い線の下に入ります。これがデッドクロスです。
よく使われる期間の組み合わせ
組み合わせに決まりはありません。株の日足の話では「50日と200日」がよく例に出ます。FX では、足の長さに合わせて、5と20、20と50 など、いろいろな組み合わせが使われています。組み合わせを変えると、交差が出る回数と時期が変わります。どの組み合わせが良いかは、相場や時期で変わり、この記事では決めません。
なぜ遅れて出るのか
移動平均は過去の価格の平均なので、価格より遅れて動きます。N本の単純移動平均の遅れは、およそ (N − 1) ÷ 2 本です(インジケーターが遅れる理由)。交差は2本の遅れた線が入れ替わる所なので、交差が出るのは、価格がもうある程度動いた後になります。図でも、ゴールデンクロスは底からかなり上がった所で出ています。
横ばいで何度も出るのはなぜか(だまし)
価格がはっきりした向きを持たず横ばいの時は、短い線と長い線が近くを行き来します。そのため、図の横ばいの所のように、ゴールデンクロスとデッドクロスが短い間に何度も出ます。交差のあとに思った向きに動かないことを、「だまし」と呼ぶことがあります。期間を長くすると交差の回数は減りますが、その分、出るのがさらに遅れます。
研究ではどう調べられてきたか
移動平均の交差のような決まりで売買したらどうなったかは、昔から研究されています。結果は一つではありません。
- 米国の株価指数(ダウ平均、1897〜1986年)を使った有名な研究では、移動平均などの簡単な決まりを強く支持する結果が出て、買いの合図の後の値動きが、売りの合図の後より良かったと報告されました。[1]
- その後、同じ種類のたくさんの決まりの中から「一番良かったもの」を選ぶと、偶然でも良く見えてしまう問題(データの見すぎ)を考えに入れて、同じダウ平均で調べ直した研究では、1897〜1986年では調べ直しても良い成績が残りましたが、それより後の期間(1987〜1996年)では、良い成績ははっきりとは見られませんでした。[2]
- 為替の市場で、前に調べられた技術的な決まりを後の期間で試し直した研究では、1970〜80年代に出ていたもうけ(超過収益)は、データの見すぎによる見かけではなく本物だった一方で、フィルターや移動平均の決まりでは、そのもうけの機会は1990年代の初めまでに消えていた、と報告されています。[3]
これらは、昔の特定の市場・期間の結果です。これからも同じになるとは言えません。交差を使うかどうか、どう使うかは、ご自身で決めてください。
自分の記録で確かめる
交差を見て入るなら、そのトレードに印を付けて記録しておくと、自分の場合にどうだったかを数で見られます。損益の一覧を取引履歴の統計に貼ると、勝率・平均の損益・最長の連敗が出ます。連敗がどれくらい起きやすいかは連敗の確率、損益がトントンになる勝率は損益分岐の勝率で確かめられます。件数が少ないうちは、数字は大きくぶれます。
参考文献
- Brock, W., Lakonishok, J., & LeBaron, B. (1992). Simple Technical Trading Rules and the Stochastic Properties of Stock Returns. The Journal of Finance, 47(5), 1731–1764. https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1992.tb04681.x
- Sullivan, R., Timmermann, A., & White, H. (1999). Data-Snooping, Technical Trading Rule Performance, and the Bootstrap. The Journal of Finance, 54(5), 1647–1691. https://doi.org/10.1111/0022-1082.00163
- Neely, C. J., Weller, P. A., & Ulrich, J. M. (2009). The Adaptive Markets Hypothesis: Evidence from the Foreign Exchange Market. Journal of Financial and Quantitative Analysis, 44(2), 467–488. https://doi.org/10.1017/S0022109009090103